蜂駆除の現場で長年経験を積んできた私が、依頼者の皆さんに必ずお伝えしていることがあります。それは「蜂を怒らせているのは、あなた自身かもしれない」という事実です。多くの場合、蜂が人を襲うのには明確な理由があります。その最大の要因の一つが、着用している衣服の色です。私たちの業界で使用する防護服がなぜ一様に白いのか、その理由を深く考えたことはあるでしょうか。それは単に清潔感を出すためではなく、蜂の攻撃性を最小限に抑えるための究極の安全策なのです。蜂、特にスズメバチの視覚システムは、色の詳細を見分けるよりも、コントラストの強弱を捉えることに特化しています。周囲の景色の中で、黒という色は最も強く浮き立ち、蜂の注意を引きます。さらに、黒い対象が動くことで、蜂の脳内では「敵が襲ってきた」という信号が増幅され、瞬時に攻撃モードへと切り替わります。駆除の際、あえて実験的に黒い布を巣の近くに置くと、蜂は迷わずその黒い布に集中攻撃を仕掛けます。一方で、白い防護服を着た私たちには、至近距離にいてもほとんど反応しないことさえあります。この事実からも、黒い服がいかに危険な「標的」となっているかがお分かりいただけるでしょう。一般の方が日常生活やレジャーで気をつけるべき点として、まずクローゼットの中にある暗い色の服を再確認してください。紺色のポロシャツ、黒いジャージ、濃いグレーのTシャツなどは、蜂が活発になる時期には「攻撃を誘う服」に変わります。特に、夕暮れ時などは周囲が暗くなるため、相対的に少しでも暗い色が目立ちやすくなります。また、髪の毛の黒さについても軽視してはいけません。蜂は生存本能として、敵の急所である頭部を狙うようになっています。日本人の多くが持つ黒髪は、蜂にとっては格好の攻撃対象です。作業中や山歩きの際は、必ず白っぽい帽子を被り、可能であれば髪の毛を中に収めてしまうのが理想的です。もし、庭先で蜂の巣を見つけてしまったら、絶対に黒い服のまま近づいてはいけません。ご自身でどうにかしようとせず、まずは静かにその場を離れることが先決です。私たちの元に寄せられる被害報告の中でも、「黒い服を着て庭木の手入れをしていたら刺された」というケースが圧倒的に多いのが現実です。蜂の巣駆除はプロに任せるべきですが、プロが来るまでの間に刺されないようにするためには、まず視覚的に蜂を刺激しない工夫が求められます。白やベージュ、薄い黄色といった、光を反射する明るい色を身につけること。それだけで、あなたとご家族の安全性は飛躍的に高まります。蜂は自然界の重要な一員ですが、人間との距離感を間違えると恐ろしい存在になります。色彩の知識を持ち、蜂の視点で自分の服装をチェックする習慣を身につけることが、不要な衝突を避け、安全に暮らすための専門家からの切実なアドバイスです。
蜂駆除の専門家が教える黒い服の危険性と対策法