夏の軒下やベランダで、黄色と黒の縞模様をした蜂が飛んでいるのを見つけた時、多くの人が「スズメバチだ!」とパニックに陥ります。しかし、その正体は、アシナガバチの仲間である「キイロアシナガバチ」である可能性が非常に高いです。彼らは、日本に生息するアシナガバチの中でも最も体が大きく、黄色みが強い体色をしているため、スズメバチと見間違えられやすいのです。しかし、その生態と危険度は、スズメバチとは異なります。まず、見た目で見分けるポイントは、その「体型」と「飛び方」です。スズメバチがずんぐりとした寸胴体型で、直線的に素早く飛ぶのに対し、キイロアシナガバチは、その名の通り足が長く、腹部もくびれたスマートな体型をしています。そして、飛ぶ際には、その後ろ脚をだらりと垂らしながら、比較的ゆっくりと、フワフワと飛ぶのが最大の特徴です。生態面では、女王蜂が春先に単独で巣作りを始め、夏にかけて働き蜂を増やしていきます。幼虫の餌として、庭の植物につくイモムシやケムシといった害虫を捕食してくれるため、生態系においては「益虫」としての一面も持っています。しかし、だからといって油断は禁物です。キイロアシナガバチは、アシナガバチの仲間の中では最も気性が荒く、攻撃性が高いことで知られています。巣に不用意に近づけば、容赦なく集団で襲いかかってきますし、その毒性も決して弱いものではありません。アナフィラキシーショックを引き起こす危険性も十分にあります。スズメバチではないからと安心するのではなく、「攻撃的なアシナガバチ」として、その危険性を正しく認識し、冷静に対処すること。それが、この厄介な隣人との共存、あるいは戦いにおける、最も重要な第一歩となるのです。