「アシナガバチはおとなしい」という一般的なイメージは、キイロアシナガバチの前では通用しないと考えた方が良いでしょう。彼らは、日本に生息するアシナガバチの仲間の中では、最も攻撃性が高く、巣に近づくものに対しては非常に強い警戒心を示す、最も危険な種類の一つです。彼らの攻撃行動のスイッチは、主に「巣の防衛本能」によって引き起こされます。巣から1メートル以内の範囲は、彼らにとっての絶対的な防衛ラインであり、この領域に侵入すると、見張り役の蜂が警戒態勢に入ります。カチカチという威嚇音を発したり、侵入者の周りを飛び回ったりするのは、その最終警告です。この警告を無視してさらに近づいたり、巣に振動を与えたりする(洗濯物を干す、窓を開けるなど)と、彼らは巣と仲間を守るために、一斉に攻撃を開始します。特に、夏から秋にかけて、巣が大きくなり、次世代の女王蜂を育てる重要な時期になると、その攻撃性はピークに達します。キイロアシナガバチに刺された場合、その症状は強烈です。毒液には、セロトニンやヒスタミン、そして様々なペプチドなどが含まれており、刺された瞬間に激しい痛みを感じ、患部は赤く腫れ上がり、熱を持ちます。この痛みと腫れは数日間続くことが多く、人によっては発熱や頭痛を伴うこともあります。しかし、最も恐ろしいのが、「アナフィラキシーショック」です。これは、蜂の毒に対する、体の過剰なアレルギー反応です。一度蜂に刺されたことがある人は、体内に抗体ができているため、二度目に刺された際に、このアナフィラキシーショックを引き起こすリスクが高まります。刺されてから数分~数十分以内に、全身のじんましんや、呼吸困難、血圧の低下、意識障害といった重篤な症状が現れ、最悪の場合、命に関わることもあります。キイロアシナガバチは、決して侮ってはいけない危険な昆虫です。その攻撃性の高さを正しく理解し、巣を見つけても決して不用意に近づかないこと。それが、自らの身の安全を守るための、絶対的なルールなのです。
アシナガバチで最も危険!キイロアシナガバチの攻撃性