庭仕事の最中や、洗濯物を取り込んでいる時、あるいはただ家の周りを歩いているだけで、突然、キイロアシナガバチに遭遇してしまう。そんな、背筋が凍るような瞬間に、あなたの取るべき行動が、その後の運命を大きく左右します。パニックになり、誤った行動をとってしまうと、穏やかだったはずの蜂を刺激し、痛みを伴う攻撃を誘発しかねません。刺されないための、正しい知識と対処法を、緊急時のために頭に入れておきましょう。まず、蜂に遭遇した時の、絶対的な基本原則は、「騒がない」「走らない」「手で払わない」の三つです。大声を出したり、急に走り出したり、あるいは手で振り払おうとしたりする大きな動きは、蜂を極度に興奮させ、「敵から攻撃されている」と誤解させてしまう最大の原因となります。もし、一匹の蜂があなたの周りを飛び始めたら、それは威嚇や偵察の可能性があります。まずは、静かにその場にしゃがみ込み、姿勢を低くして、動きを止めましょう。多くの場合、蜂はあなたに敵意がないことを確認すると、そのままどこかへ飛び去っていきます。もし、蜂が飛び去らず、周囲を旋回し続けるなど、明らかに威嚇行動がエスカレートしている場合は、その場に巣が近くにある可能性が非常に高いです。その場合は、蜂を刺激しないように、ゆっくりと、静かに、後ずさりするようにして、その場から離れてください。この時、蜂に背中を向けて走って逃げるのは最悪の選択です。逃げるものを追いかけるという、蜂の習性を刺激してしまいます。服装にも注意が必要です。蜂は、天敵であるクマなどを連想させる、黒い色や、ひらひらと動くものに強く反応します。夏場に屋外で活動する際は、できるだけ白っぽい、体にフィットした服装を心がけましょう。また、香水や香りの強い整髪料、甘いジュースの匂いなども、蜂を誘引する原因となるため、注意が必要です。万が一、刺されてしまった場合は、すぐにその場から20メートル以上離れ、安全な場所で応急処置を行います。そして、もし、全身のじんましんや息苦しさといった、アナフィラキシーショックの兆候が見られた場合は、ためらわずに救急車を呼んでください。冷静さと、正しい知識。それこそが、あなたを蜂の針から守る、最強の鎧となるのです。