犯人特定③触れていないのに発症?「毛虫」の毒針毛の恐怖
庭仕事や公園の散策中、あるいは街路樹の下を歩いていただけなのに、腕や首筋に、突然ピリピリとした痛みと共に、赤いブツブツが広範囲に広がってきた。そして、その発疹が、強いかゆみと小さな水ぶくれに変わっていく。このような場合、それは何かに「刺された」のではなく、「毛虫」の毒針毛(どくしんもう)に「触れた」ことによる皮膚炎(毛虫皮膚炎)の可能性を疑うべきです。毛虫による被害で最も代表的なのが、「チャドクガ」の幼虫です。この毛虫は、ツバキやサザンカといったツバキ科の植物に大発生し、その体には、0.1ミリ程度の、目には見えない無数の毒針毛がびっしりと生えています。この毒針毛は非常に抜けやすく、風に乗って飛散するため、毛虫に直接触れなくても、近くの木の下を通っただけで、衣服や露出した皮膚に付着してしまうことがあるのです。これが、「触れていないのに発症する」という、毛虫皮膚炎の最大の恐怖です。毒針毛が皮膚に刺さると、直後から強いかゆみと灼熱感を伴う赤いブツブツが現れ、数時間後には小さな水ぶくれになることもあります。発疹が、腕や首などに、線状に、あるいは帯状に広がることが多いのも、この皮膚炎の特徴です。もし、毛虫に触れた可能性がある場合は、絶対に患部を掻いてはいけません。掻くことで、皮膚に刺さった毒針毛をさらに深く押し込んだり、周囲に広げたりして、被害を拡大させてしまいます。すぐにセロハンテープなどで患部をそっと押さえて、皮膚に残った毒針毛を取り除き、その後、強い流水で洗い流すことが重要です。そして、ステロイド軟膏を塗布します。見えない針による静かなる攻撃。それもまた、水ぶくれを作る、厄介な犯人の一人なのです。