害虫駆除の現場で長年、数千件もの案件に対応してきた専門家の視点から見ると、一般の方が訴える「大きくて丸い蜂がいて怖い」という相談の多くは、実は非常にリスクの低い種類の蜂であることが大半ですが、それでも油断してはいけない重要なポイントがいくつか存在します。まず、大きくて丸いフォルムの代名詞であるクマバチですが、彼らが人間を刺すケースのほとんどは、飛んでいる最中に手で捕まえようとしたり、巣の中に指を入れたりといった、直接的な物理刺激を与えた場合に限られます。専門家として強調したいのは、この丸い蜂たちは基本的に単独性、あるいは小規模な家族で生活しているため、スズメバチのように集団で執拗に追いかけてくるような組織的攻撃能力を持っていないという点です。しかし、似たような外見で注意すべきなのが、キイロスズメバチなどの一部の個体が、光の加減や羽毛の逆立ちによって丸っこく見える場合であり、特に飛翔速度が速く、羽音が鋭い金属音に近い場合は、丸い蜂であっても警戒度を最大に引き上げる必要があります。また、マルハナバチについては、農作物の受粉用としてビニールハウスなどに導入されることもある有益な昆虫ですが、巣を守る本能は備わっているため、踏みつけたり巣を壊したりすれば一斉に襲ってくる可能性はゼロではありません。専門的な駆除が必要になるのは、蜂そのものの危険性よりも、その営巣行動による二次被害が懸念されるケースです。例えば、クマバチが家の重要構造部である柱に深く穴を掘り進めてしまった場合や、マルハナバチの巣に他の寄生蜂や不衛生な害虫が寄り付くようになった場合には、プロの介入が推奨されます。駆除作業において私たちが最も気を使うのは、周囲の環境負荷であり、大きくて丸い蜂たちは多くの植物にとって不可欠な授粉媒介者であるため、可能な限り殺生を避けて巣を移設したり、侵入口を封鎖したりする穏やかな手法を選択します。一般の方にアドバイスするとすれば、大きくて丸い蜂を見かけた際は、まずは立ち止まってその蜂の「忙しさ」を観察してください。彼らが花から花へと一生懸命に移動しているのであれば、あなたに興味は全くありません。逆に、あなたの周囲を何度も旋回し、不自然に近づいてくる場合は、近くに巣があるサインかもしれません。専門家の知識を借りることは、単に問題を解決するだけでなく、自分の家の周りにどのような命が息づいているのかを深く知る機会にもなります。
専門家が解説する大きくて丸い蜂の危険性