私が、あの銀色の悪魔、シルバーフィッシュの存在を初めて認識したのは、新築のマンションに引っ越してきて、ちょうど一年が経った梅雨の時期でした。最初は、夜中に洗面所の床で、一匹見かける程度でした。「なんだか変な虫だな」と思いつつも、動きが素早く、すぐに隙間に消えてしまうので、あまり気に留めていませんでした。しかし、その遭遇頻度は、日に日に増していきました。本棚の裏、クローゼットの隅、そしてある夜、ベッドで本を読んでいると、壁を這っているのを発見してしまったのです。私は、恐怖のあまり飛び起きました。インターネットでその正体を調べ、それが「シルバーフィッシュ」という、湿気と紙を好む虫であることを知りました。そして、愕然としました。我が家は、彼らにとって、まさに理想郷だったのです。新築のマンションは、コンクリートの水分が抜けきっておらず、全体的に湿度が高かった。そして、本好きの私は、壁一面に本棚を設置し、引っ越しの際に使った大量の段ボールも、いつか使うだろうと、クローゼットの奥に積み上げていました。湿気、餌、隠れ家。すべての条件が、完璧に揃っていたのです。私は、意を決して、家中の大掃除と駆除作戦を開始しました。まず、クローゼットの段ボールをすべて処分。すると、その下から、数えきれないほどのシルバーフィッシュが蠢きながら現れ、私は半狂乱になりながら殺虫スプレーを噴射しました。次に、壁一面の本をすべて取り出し、一冊一冊ホコリを払い、本棚の裏を徹底的に掃除しました。そして、部屋の至る所に除湿剤と、ゴキブリ用の毒餌を設置。家中を燻煙剤でいぶし、換気と掃除を徹底する日々が続きました。数週間にわたる戦いの末、あの銀色の姿を見ることは、ほとんどなくなりました。この経験から学んだのは、家の快適さは、人間だけのものではない、ということです。そして、不要な物を溜め込むことが、いかに害虫に住処を提供することになるか、という教訓でした。
我が家にシルバーフィッシュが大量発生した話